- 1. はじめに:PS4でクラッシュをやって気づいたこと
- 2. 「子供向け据え置きゲーム」はなぜ消えたのか
- 3. これはゲームだけじゃない──業界横断で起きていること
- 4. 構造の正体:「大人に売る方が儲かる」という引力
- 5. おわりに:子供の居場所は、家庭が作るしかない時代かもしれない
1. はじめに:PS4でクラッシュをやって気づいたこと
少し前、次男(小2)と一緒にPS4でクラッシュ・バンディクーをプレイしました。
コントローラーを握ってすぐ思ったのは、「これ、操作がシンプルで子供にめちゃくちゃ向いてるじゃないか」ということ。穴に落ちないよう走って、箱を割って、回転しながら敵をかわす──ルールが直感的にわかる設計で、次男も「次こそ!」を繰り返しながら夢中でやっていました。
ただそこでふと気づいたんです。
「今の小学生って、PS4やPS5でゲームしてるイメージ、そんなにないよな」と。
次男の同級生に聞くと、みんな持ってるのはSwitchで、遊んでるのはポケモン・スマブラ・マリカーばかり。PS5を持ってる子はほとんどいない。そういえばPS系の子供向けゲームって、昔に比べると減った気がする──気になって調べてみました。
2. 「子供向け据え置きゲーム」はなぜ消えたのか
クラッシュを作った会社の「その後」
PS1時代のクラッシュ・バンディクーは、Naughty Dogというスタジオが作っていました。当時ソニーの看板キャラとして大ヒットし、「子供がSonyを選ぶ理由」の一つだったはずです。
そのNaughty Dogが今作っているのは何かというと──アンチャーテッドを経て、The Last of Usです。ゾンビに荒廃した世界を生き延びる、大人向けのシリアスなアクション。ゲームとしては超絶完成度が高いですが、子供に一緒にやろうとは言えない内容です(笑)。
子供向けゲームを作っていた会社が、大人向けにシフトした。これが一番わかりやすい変化かなーと思います。
「AA市場」が丸ごと消えた
ゲーム業界には規模の分類があって、ざっくり言うと──
- AAAタイトル:開発費100億円超の大作(FF・GTAなど)
- AAタイトル:数十億円規模の中間作(かつてのクラッシュはこのクラス)
- インディー:小規模・個人開発
今の市場を見ると、上はAAAタイトルが総取り、下はスマホ・基本無料ゲームが「気軽に遊びたい層」を全部持っていっています。「据え置きで、シンプルで、子供に向いてる」というAAクラスのゲームが成立するビジネスモデルが、きれいに消えてしまった、というのが自分の理解です。
NintendoだけがBlue Oceanを守り続けている
じゃあ子供はゲームができないのかというと、そこを救っているのがNintendoで。
Switchの設計思想を見ると、最初から「家族の居間」を狙っているのが分かります。Joy-Conは2本に分割できて親子で持ち合える、テレビとポータブルを切り替えできる、ポケモン・どうぶつの森・マリカー・スマブラは全部「みんなで遊べる」設計。
実際のデータを見ても、2024年の国内ゲーム機販売台数はNintendo Switchが約310万台で8年連続トップ。PS5の約145万台に対して倍以上のリードです(参考:gamebiz 2024年国内ゲーム市場速報)。
ソニーは「18〜35歳男性コアゲーマー向け・映画的体験」路線、マイクロソフトはGame Passの量的価値提供に注力しています。なので「子供向けを守り続けている据え置きゲームメーカー」は、実質Nintendoだけになったのかなーと思います。
3. これはゲームだけじゃない──業界横断で起きていること
調べていくうちに気づいたんですが、「子供向けが縮小して大人向けにシフトする」という構造変化は、ゲームだけの話じゃないみたいです。
少年ジャンプの読者は「少年」じゃない
「週刊少年ジャンプ」という名前、よく考えると「少年向け」のはずですよね。
でも集英社のデータによると、2022年時点で10〜15歳の読者は全体の16.4%しかいなくて、16歳以上が70.8%を占めているみたいです。2012年時点では10〜15歳が63%を占めていたことと比べると、10年でかなり変わっています。
元ジャンプ作家の方が「今の読者の平均年齢が28歳と知り衝撃を受けた。自分の頃は14歳だったのに」と発言されているのが印象的でした(参考:超マンガ速報)。
鬼滅の刃も呪術廻戦も「少年ジャンプ」掲載ですが、映画に来ていたのは中高生から大人が中心でしたよね。子供も読みますが、購買力のある大人が支えるコンテンツになっているのは多分間違いないと思います。
ポケモンカードを子供が買えない日
これはちょっとシュールな話なんですが、「子供向けコンテンツ」の代名詞でもあるポケモンカードが、子供の手に届かなくなっています。
2023年の新弾発売日には梅田・秋葉原・博多などで大行列が発生し、一部では警察が出動するほどの騒ぎに。転売ヤーの買い占めで純粋に遊びたい子供が購入できない状況が社会問題になりました(参考:ウーマンエキサイト)。
マクドナルドのハッピーセット付属のポケカも転売対象になり、「子ども向けの商品を子供が手に入れられない」という逆転現象が起きています。
とはいえ子供はたくましくて、今はスマホの「ポケモンポケット(ポケポケ)」に流れているみたいです。無料でできるし、まぁそっちの方が遊びやすいのかもしれません。
ガンプラが「大人の趣味」になった
ガンプラも似た構造です。
最高グレードのPG(パーフェクトグレード)の価格帯は現在15,000円〜55,000円。完全に大人のコレクター・熟練モデラー向けの製品です(参考:マイベスト)。
子供向けのHGは今も1,000円前後で買えるものがありますが、バンダイのガンプラ事業全体が「大人が本気でハマる趣味」として再定義されてきている印象です。ガンダムベースの開設・コレクターズアイテムの展開を見ると、ターゲットが子供よりも購買力のある大人にシフトしているのは間違いなさそう。
4. 構造の正体:「大人に売る方が儲かる」という引力
ここまで見てきた変化には、共通する構造があると思っています。
少子化が起点になっている
日本の子供の数が減り続けているのはご存知の通りです。1980年代には2500万人を超えていた0〜14歳人口は、今や1400万人台まで減少しています。
子供の数が減れば、子供向けビジネスのパイも縮む。でも社会全体の購買力が消えるわけじゃなくて、それが大人に移動する。「大人に売る方が儲かる」という経済的引力が、業界全体の舵を少しずつ引っ張り続けた結果が今なんじゃないかと。
ディズニーがマーベルやスターウォーズに注力した件も、少年ジャンプの読者が大人にシフトした件も、ガンプラが高額化した件も、起点には「子供の数と購買力の縮小」があるように見えます。深夜アニメへのシフトやガンプラの高額化はYouTube本格普及よりも前から起きていたので、多分そうなんじゃないかなーと思います。
そこにYouTubeが完璧なタイミングで入ってきた
もう一つの要因がYouTubeです。
無料・無限・自分のペースで見られる。子供の可処分時間をまとめて持っていく設計として、これ以上のものはないと思います。子供向けコンテンツの「時間」を奪われた産業は、さらに大人向けへの投資にシフトしていく。
「YouTubeが先か、コンテンツ縮小が先か」という話でいうと、多分起点は少子化の方で、YouTubeはその流れを加速させた「完璧なタイミングの加速装置」なんじゃないかなーと。
正のフィードバックループ
一度この流れが始まると、止まらなくなります。
子供向けコンテンツが減る → 子供はYouTubeに流れる → 子供向けビジネスの市場が縮む → さらに大人向けにシフトする → さらに子供の居場所がなくなる → またYouTubeへ
このループが回り続けている感じがして、正直「これは構造的にかなり不可逆だろうな」と思ってしまいました。
5. おわりに:子供の居場所は、家庭が作るしかない時代かもしれない
「子供向けが消えた」というのを単なる市場の縮小として読むこともできます。
でも自分がモヤモヤするのは、「産業が大人向けにシフトした」という話にとどまらず、「社会全体として子供に向ける眼差しが変わってきた」という感覚があるからかもしれないです。
ゴールデンタイムのアニメが深夜に移り、ガンプラが大人の趣味になり、ポケモンカードが子供の手に届かなくなり、公共の場では子供の声が「騒音」と言われる。「子供が当たり前に存在する文化圏」が、産業的にも社会的にも縮んでいる気がします。
とはいえ「どうすれば子供向けコンテンツを復活させられるか」という話は、正直自分一人では何ともならない話で。
それより「今の社会では、家庭が意識的に子供向けの体験を作るしかないんだろうな」という気持ちの方が強くなっています。
クラッシュ・バンディクーを次男と一緒にやったのも、子どもにどんな経験をさせて挙げられるだろうかと考えながら休日を過ごしているのも、振り返ってみると、昔はできていたはずの子どもの幼い頃の自由な経験、小さな冒険、ワクワクする体験を家庭でせめて引き受けていたいという気持ちからだったのかもしれないなー、と思います。
気になったことをなんとなく調べてみた内容ですが、書いてみたら自分の整理にもなりました。






